相続した生産緑地の写真

相続する土地が生産緑地の指定を受けていたら注意が必要!

市街化区域内の農地等であっても「生産緑地地区」として指定を受けた農地等を相続する場合には注意が必要です。

「生産緑地地区」として指定を受けた農地等を相続(相続後の売却等含む)をする際の必要な知識を下記にまとめました。

相続した生産緑地の写真

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相続した都市部の農地!生産緑地の確認方法は?

5月~6月頃に送付される固定資産税納税通知書を確認し、市街地の宅地であって、評価額が著しく安くなっていれば(例えば、坪単価50万円の土地が坪160円で計算されている)、相続した土地は生産緑地であるということが確認できます。

また、相続した農地の現地に「生産緑地」という標識があれば生産緑地です。

しかし、私が見かけた標識の中には、錆びついていて何の看板かわからないものもありました(下の写真)ので、そのような場合は、自治体に確認する方法が確実です。

相続した生産緑地、錆びついた看板です。

生産緑地に指定された農地を相続したけど、そもそも生産緑地ってなに?

そもそも生産緑地地区とは、

生産緑地地区に関する都市計画に関し必要な事項を定めることにより、農林漁業との調整を図りつつ良好な都市環境の形成に資することを目的とする地区のこと(生産緑地法第1条 以下「法第~条」)

条文が分かりにくいので、重要なことを補充して説明するのであれば、

「生産緑地がもつ農作物を供給する機能、防炎・良好な景観の形成並びに国土及び環境の保全等の機能」

「日本経済の発展に伴う土地不足により、市街化区域内の農地の宅地転用を促す都市化や宅地化していくことによる開発」

の均衡を図る制度です。

つまり、誤解を恐れずもっと簡単に一言でいれば

「緑地機能」「宅地開発」の均衡をとっている制度

です。

※生産緑地機能の具体例は、火災や地震があった場合、建物延焼や倒壊の連続を防げることにつながる等です。

※農地等とは、現に農業の用に供されている農地や採草放牧地、現に林業の用に供されている森林、現に漁業の用に供されている池沼をいいます。

相続した生産緑地の謎、なぜ生産緑地の指定がされたの?

日本経済の発展に伴い、市街化区域内の農地の宅地転用を促す目的で、市街化区域内の農地については原則、固定資産税および相続税の課税が宅地並みに引き上げられ、農地の多くが宅地へと変わりました。

つまり、「農地として持っていても宅地と同じで税金が高いなら、より資産価値の高い宅地にしてしまおう!」という考えです。

しかし、1991年の改正緑地法によって、無秩序に開発行為が進んでしまうことを防ぐ必要性と、生産緑地の持つ上述の緑地機能の都市部においての重要性を重視し、市街化区域内の農地に対して宅地並みの課税が課せられる対策として、

「生産緑地の指定条件の緩和」と「生産緑地については農地課税(安い税金)を継続する」こととなり、生産緑地地区制度による指定を受ける農地が増加しました。

安い固定資産税で土地を持っていられるのであれば、地主は大助かりです。

相続した生産緑地の問題点、2022年問題!

上記のとおり、1991年の生産緑地指定条件緩和時に生産緑地が増えました。

そして、指定した30年以上が経過する2022年以降、農家の高齢化・後継者不足により都市部の大量の土地が生産緑地指定を解除され、

宅地として不動産市場に流れることで地価が下落するといった予測が「2022年問題」です。

後継者が農業を営んでいる方も、もちろんいらっしゃいますが、ほとんどの後継者は農業を継ぐ予定のない方が多いのが実情です。

また、農業を継がない生産緑地の(推定)相続人等が、資産価値の高い都市部の農地を宅地に転用し売却したり、マンション建設や家賃収入等の高収益の見込める土地へと転用するのは当然と言えるでしょう。

有識者により、様々な観測がなされていますが、生産緑地制度上の観測(30年経過の指定解除)から都市部の多くの生産緑地が、宅地(戸建・マンション等)へと変わっていくことが予想されています。

※ただし、国土交通省が行ったアンケート調査によると、「自分で管理する事については負担はあるが、祖先から受け継いだ農地を維持したい」という回答も多く、

他者に農地を貸すことで引き続き生産緑地として維持していきたいという意向も見受けられています。

練馬区の生産緑地を相続しました。

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練馬区と板橋区の生産緑地地区の指定状況の比較!練馬区、世田谷区は要注意!

ちなみに当事務所の所在地である板橋区では、平成29年11月現在68地区、面積9.83ヘクタールが生産緑地地区に指定されているのに対し、

隣接区である練馬区では、平成30年8月現在651地区、178.72ヘクタールが指定され23区で1位です。ちなみに2位は世田谷区503地区、86.08ヘクタールです。

板橋区から練馬区まで少し歩けば分かるのですが、練馬区に入ると生産緑地が非常に多いです(平成30年11月現在)。

生産緑地を相続したけど、そもそも生産緑地地区に指定されるためにはどのような要件をクリアしていたのか?

①現に農業の用に供されていること

農地として、適正に肥料をやって作物を栽培している土地であること。

②良好な生活環境確保の機能を有し、かつ公共施設等の用地として適していること

保全する農地として良好な都市環境の形成に役立ち、将来の公共施設の敷地として適している土地であること。

③面積が一団(※)で500平方メートル以上の農地等であること

単独もしくは、近隣の農地等と併せて一団で500平方メートル以上の土地であること。

④農業の継続が可能であること

原則として30年間の農業を営む意志があること。

平成30年5月に生産緑地法の改正が行われました。

生産緑地指定されている土地が、急激に宅地化された場合、

緑地機能の喪失による災害の増加や街並みの色合いや雰囲気を壊すといった影響を与えるので、平成30年5月に生産緑地法の改正が行われました。

①従来の要件「500平方メートル以上の農地」が「300平方メートル」へと要件が緩和された

生産緑地に指定するための面積要件は上記のとおり500平方メートル以上あることと定められていました。

この面積要件を緩和し、自治体が条例により300平方メートルを下限として引き下げることができるようになります。

②指定地区内での直販所やレストランなどの建物設置を許可し要件が緩和された

改正により、その土地で採れた農産物などが使われた商品の製造や加工、販売を行なうレストランなどの施設を設置条件等を満たすことにより設置することが可能になりました。

具体的に言えば、生産緑地地区内で許可を受けて建築できる施設として、以下の施設が追加されました。

1、生産緑地内で生産された農作物等を主たる原材料とする製造・加工施設(ジャム等の製造施設など)

2、生産緑地内で生産された農作物等、製造・加工品の物販店舗(直売所や上記商品の販売店舗など)

3、生産緑地内で生産された農作物等を主たる材料とする飲食店(農家レストランなど)

生産緑地を相続し、野菜販売

③生産緑地地区の指定期間延長(30年経過後は10年ごとに延長可)買取り申出までの期間を10年間延長することが可能になり要件が緩和された

自治体に生産緑地の買取り申出ができる時期は、「生産緑地地区の都市計画決定の告示日から30年経過後」とされていましたが、

「特定生産緑地」として指定することで10年延長することができるようになりました。

端的にいえば、「特定生産緑地」として指定された土地の買取り申し出の期間を、10年間延長できるというものです。さらに再延長することも可能なので、更新を10年ごとにできるようにもなります。

適用条件は「生産緑地指定から30年経過した農地であって、
農地として保全することが都市環境のために有効であること」です。

相続した生産緑地。生産緑地になるメリットって何だった?

1、固定資産税が一般農地並みの課税となります。つまり誤解を恐れずに言えば、土地の評価が安くなっています。

2、相続税の納税猶予の特例などが設けられてています。

3、農地等として維持するための助言や、土地交換のあっせんなどを自治体より受けることができます。

相続した生産緑地。生産緑地になったデメリットって何だった?

1、土地の所有者または管理者等に、農地としての維持管理を求められます。

2、農地以外としての転用・転売はできません。しかし、農地としての転売については農地法による手続きにより行うことはできます。

3、生産緑地地区内において建築物等の新築・改築・増築や、宅地造成等土地の形質の変更を及ぼす行為は出来ません。

ただし、農業等を営むためにビニールハウス、水道設備、従業員の休憩所等を設置することが必要であり、周辺環境に悪影響を及ぼさないものについては、自治体の長の許可を受けて設置することができます。

4、土石の採取、水面の埋め立て、干拓などが制限されます。

5、上記1~4に違反した場合、自治体から原状回復命令が出されることがあります
(以上法第7条1項、第8条、第9条)。

相続した生産緑地を売りたい ①生産緑地の指定解除はどのような場合にできるの?

相続した生産緑地を売却したい場合は、以下の1~3のいずれか(生産緑地を相続する場合は3に該当します)に該当する所有者又は相続人は市区町村の農業委員会に買取り申し出を行うことができます。

1、生産緑地の指定後30年経過。

2、生産緑地の所有者または主たる従事者の疾病・障害等により農業等の継続が困難な場合。

3、生産緑地の所有者の死亡により相続した者が農業等を営まない場合。

相続した生産緑地を売りたい ②買取申出

生産緑地地区に指定された農地等相続した相続人は、市区町村長に対して生産緑地の買取りを申し出ることができます。

そして、市区町村が買収せず、農業経営者への買取りあっせんを経て、相続した生産緑地の買取りをする者がいない場合には、生産緑地の指定が解除されます。

相続した生産緑地を売りたい ③宅地に転用して売りたい

相続人が農業を継がない場合、市区町村に買取り申出をして買取り者がいなければ、当該申出から3ヶ月経過すれば転用目的の売買も可能です。

なお、相続により農地である生産緑地の権利を取得した場合、農地法第3条の届出が必要です。相続発生日から10か月以内に農業委員会に届出が必要です。

農地法関連については田んぼ畑の相続の記事をご参照ください。

一般的な土地の相続登記について注意すべきことについてはこちらをご参照ください。

関連条文↓
(生産緑地の買取りの申出)法第10条

(生産緑地の買取り等)法第11条

(生産緑地の買取りの通知等)法第12条

(生産緑地の取得のあつせん)法第13条

相続した生産緑地を売りたい ④まとめ

生産緑地に相続が発生した場合は、当該生産緑地は、相続税評価額において宅地の95%の評価となりますが、5%しか減らせないのであればさほどメリットがなく、

相続発生時に売却して相続税を売却代金で納めようとしても、上記のように宅地化するまでに時間がかかるので、相続税の申告まで時間が足りないことがあります。

仮に宅地化できたとしても敷地自体が建築基準法の道路に未接道、敷地が不整形の場合、今後将来にわたり実際に売れるかどうかはまた別問題になってきます。

生産緑地の相続については当事務所にご予約の上、ご相談ください。
→練馬区の相続相談はこちらです。
→世田谷区の相続相談はこちらをご参照ください。
※記事に関するお電話での無料相続相談は行っておりませんので、ご了承ください。