松子は85歳で肝癌、肝硬変を患い、板橋区の病院に入院中である。息子の依頼した公証人が病室で公正証書遺言を作成した。松子は作成された公正証書遺言に署名ができない状態なので公証人が代書し、実印の捺印も自力では弱く不鮮明となったため、公証人が代わりに捺印した。その数日後、松子はその後肝癌、肝硬変の合併症を引き起こし死亡した。この場合、娘が遺留分(最低限保証される相続分の額)を主張する前提として、公正証書遺言は無効である訴えを起こした場合、本件公証人が作成した公正証書は無効か?

まず本件で、公正証書遺言は「意思能力」※遺言の意味、内容を理解、判断するに足るだけの意識状態、精神能力を持続していたか否かが問題になる。

似たような事例で裁判所は、松子が入院当初から重症で、主治医と脳神経外科専門医の証言を参考に、肝不全状態から生ずる意識障害(昏睡)の段階、程度を慎重に審理し、公正証書遺言作成の二日前から、昏睡度三(ほとんど眠っていて外的刺激により開眼しうる)、ないし四(痛み、刺激には反応する)の状態であったとして、遺言当時においては前記のような意思能力はなかったとして認定したものがあります。つまり公正証書遺言は無効になった例です。

事例を検討し、状況を把握したうえ、遺言に司法書士・行政書士の判断・証人名を取り入れ、判断仰ぎながら正確な遺言書を作成しておく必要がありますね。。

というのは、公証人は公務員ですが、指定された地域に自ら公証人役場を開き、書記らを雇って職務をおこなっています。国家から俸給を得るのではなく、依頼人から受け取る手数料が収入源です。公務員なのに自営。。。
このように無効なものでも作成してしまう事例がでる原因のひとつになります。

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