生活保護,相続,相続放棄

生活保護受給者が遺産相続や相続放棄!生活保護の支給は?

生活保護の支給総額は2001年に2兆円から2014年の支給額は3兆8000億円となるなど増加傾向であり、生活保護を必要としている方の最後の砦としての制度となっている反面、不正受給や貧困ビジネスに利用されるなどの社会問題にもなっています。

高齢社会において相続人が生活保護受給者となることは少なくありません。今回は当事務所で相談者の方から受けることが多い質問で「生活保護を受給している相続人が遺産相続したら、生活保護の支給はどうなるのか?」といった点を記載します。

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相続する前に生活保護の制度を確認する!

まず、生活保護制度とは、

 

「生活に困窮する方」に対し、

その「困窮の程度に応じて必要な保護」を行い、

健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、「自立を助長すること」を目的としています。

 

健康で文化的な最低限度の生活」を保障する憲法25条の理念に基づいた制度ですが、永遠に生活保護を受給できる特権ではなく、生活困窮者に対する「自立支援」を目的とした制度です。

 

 

相続する前に生活保護受給の要件を再度確認する!

それでは生活保護の要件を確認します。

まず下記①~④で全体の要件を並べました。
※分かりやすいように各条文を噛み砕きながら自分なりにつなげました。
※以下「法」は「生活保護法」のことです。

 

①生活に困窮する者の(法1条)

②世帯員全員が(法10条)

③その利用し得る資産、能力その他あらゆるものをその最低限度の生活の維持のために活用することを前提とし(法4条1項)

④それでも困窮しているが、生活を援助してくれる扶養義務者や扶助する者もいない(法4条2項)。

 

相続する前に生活保護受給の個々の要件を確認する!

①生活に困窮する者の(法1条)

「生活に困窮する者」とは、世帯の収入と厚生労働大臣の定める基準で計算される最低生活費を比較して、収入が最低生活費に満たない生活困窮者に対し保護が適用されるということです。

 

②世帯員全員が(法10条)

個人ではなく世帯単位で収入の計算が行われます。例えば生活保護を受けたい方の年収が0円でもその世帯で、父親の年収が1000万、母親の年収が300万であれば世帯収入は1,300万円になります。

 

③その利用し得る資産、能力その他あらゆるものをその最低限度の生活の維持のために活用することを前提とし(法4条1項)

資産とは、土地や建物の不動産・預貯金・生命保険・自動車など金銭換価し価値があるものです。金銭換価できるものですので、生活に利用されていない土地・建物等があれば売却等し生活費に充なければなりません。

 

その他あらゆるものを活用することとは、生活保護以外の他の法律や制度による給付がある場合は、優先して受給し生活費に充てることが求められます。

 

例えば、各種年金・児童扶養手当・高齢福祉手当・身体障害者福祉手当・雇用保険・健康保険等を先に請求又は給付を受ける必要があります。

 

④それでも困窮しているが、生活を援助してくれる扶養義務者や扶助する者もいない(法4条2項)。

配偶者、両親、子供、兄弟姉妹や親戚などから、できる限りの援助をお願いすることを求められます。母子家庭で養育費をもらっていない場合は、離婚した夫に対し、養育費を請求することも求められます。

相続により遺産相続を受けたものは③に該当し、原則生活保護停止か廃止。

生活保護受給中の方が、相続によって遺産相続財産を取得した場合、原則としては「生活の維持のために活用できる財産を取得」したとして「保護を必要としなくなったとき」に該当し、受給停止または廃止になります(法26条)。

 

生活保護受給者は遺産相続したり、相続放棄できないの?

しかし、どんな資産を相続した場合でも停止や廃止をする訳ではなく、実情に応じて少額な資産や生活や事業に必要最低限な資産、処分することが著しく困難なものは、相続承認、又は相続放棄ができるものであると考えます。

 

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例えば、実家の土地ですが、土地の時価価格がつかず売却が困難な山林や雑種地についてはそもそも不動産自体の価値が低い上、長年の放置により相続がまとまらなくなっている場合や整地や売却できるようにするまでの不動産処理の手続きに多額費用が生じる場合等多くの問題を抱えていることがあります。

 

この場合、実態の状況を福祉事務所に報告し、遺産分割の上相続分を受取らないとしても問題ないと考えます。

 

このような資産は、生活の維持のために活用できないからです。多額の借入金が相続財産のみである場合は言うまでもなく「生活の維持のために」どころか破綻に追い込まれてしまいますので相続放棄できます。

 

しかし、生活の維持のために活用できる遺産相続があるにも関わらず(例えば遺産分割もスムーズに進み預金が500万円入ってくる等)保護が打ち切られてしまうからといって相続を放棄することは許されないものと考えられます。

 

相続した財産を申請しなくても大丈夫?

生活保護は、永遠に生活保護を受給できる特権ではなく、生活困窮者に対する「自立支援」を目的とした制度ですので、生活保護受給中の方は、収入の状況を毎月定期申告しなければなりません。福祉事務所のケースワーカーが実態に応じ、年数回の訪問調査を行っています。

 

また、生活保護を受給中の方は臨時でも収入の変動があれば福祉事務所に届けなければならない義務があります(法61条)。

 

従って、生活保護を受給中の方は少額な資産の相続でも遺産分割の結果は福祉事務所へしっかりと報告をすべきです。報告をしなかったけど大丈夫だったよ?というかたは、調査が及ばなかっただけです。

 

相続した財産について生活保護の相談場所は?

生活保護の相談・申請窓口は、住所地域を所管する福祉事務所の生活保護担当です。福祉事務所は、市や区では市区役所が設置しています。

 

町村部では都道府県が設置しています。福祉事務所を設置していない町村にお住まいの方は、町村役場でも申請の手続を行うことができます。

 

生活保護受給者は遺産相続できる。

生活保護を受けている方であっても、当然、相続をすることが出来ます。
しかし、生活保護を受給されている方が生活保護を受給したまま、相続によって保有することが出来る相続財産は上記で説明したように実態を確認しなければなりません。

 

つまり、生活保護が打ち切られるか否かは、相続する遺産の実際の価値や、生活保護受給額によって変わってくることになります。その判断基準は「生活の維持のために活用できるか否か」等を実態に応じ判断協議していくことになります。

 

なお、停止となった後、再度、生活保護を受給しようとする場合には、相続により取得した財産を含め、保有することができる資産以外の資産を全て費消した後でなければ、生活保護の申請することが出来ません。

生活保護を受けている父母がなくなったけど遺産相続の手続きは必要なの?

生活保護を受けている方が亡くなった場合でも、その方に関する遺産の相続手続きは必要です。
受取れる遺産がない場合は、相続人は相続放棄も検討できます。

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生活保護受給者が相続した財産に関する不正受給の事件も起きています。

 

和歌山市は、大阪府内に住む70代の男性に対し、土地や建物を所有していることなどを隠して生活保護費約50万円を不正受給したとして平成28年3月29日詐欺罪で和歌山西署に刑事告訴しました。

 

男性は平成13年から大阪府和泉市で生活保護費を受給していましたが、平成23年に泉佐野市の土地、建物を相続したにもかかわらず和泉市に申請せず、受給に関する調査を拒否したので、和泉市は平成27年3月に支給を停止していました。

 

そこで、この男性は和泉市で生活保護を停止されているので、今度は和歌山市に「家がない」と申請し、約3カ月分の生活保護費をだまし取りました。

 

→相続手続きのご相談はみなづき法務事務所までご相談ください。